NYインテリアコラム10 オレゴン州マウントフッド

マウントフッドの山小屋ホテル――ティンバーラインロッジ

マウントフッドから日暮れのティンバーラインロッジをながめる
マウントフッドはオレゴン州の代表的な山です。標高3353メートル、富士山とならぶ高さです。マウントフッドは一年中スキーが楽しめることでも知られています。そこに建つティンバーラインロッジはマウントフッドのティンバーライン=高木限界にあるロッジ=山小屋ホテルです。針葉樹の森を切り開いた山道を車で登っていくと、このロッジを境にその上にはもう木はほとんどありません。映画シャイニングの舞台になったことでも有名です。

扉の上にほどこされたマウンテンライオンの彫刻
建築で山男を表現したならばきっとこのような建物になったであろうと思わせる、雄大でダイナミックな山小屋です。このロッジの歴史は古く、アメリカの大恐慌の時代に当時の大統領ルーズベルトのもと、経済復興対策の一つとして1936年、わずか15ヶ月で建てられました。 外壁と屋根は、シングルと呼ばれる木を裂いたサイディングとかわらで覆われ、外観は山肌に溶け込むようです。一歩ロッジの中に入るとまるで巨人の家に迷い込んだようです。このロッジの中心は三階吹き抜け、大黒柱は石の柱で暖炉にもなっています。暖炉の石、柱に使われている木の丸太、すべてのスケールが巨人サイズです。玄関扉だけでも重さ約500キロといわれています。このロッジを建築するために失業している職人が国に雇われました。扉の上の欄間、階段の欄干に丁寧に彫られている山に住む動物たちを見ると、その職人たちの心意気が感じられます。

地下ロビーに置かれている鉄と木と革で作られたカウボーイのイメージの椅子
家具も建築当時のものが大切に保存され今も使われています。地下のロビーにある鉄のフレームの椅子は、鍛冶屋が額に汗をしながら鉄をトントンとたたいている姿が思い浮かべられるほどのインパクトがあります。その鉄のフレームに犬が「おいしそう!」とよだれを垂らしそうなローハイドとよばれる、色のつけていないなめしの浅い革が椅子の座に編まれています。鉄の肘掛にもこの同じ革が巻かれています。
一つ一つの「部品」は男っぽいのですが、その部品の集合としてのティンバーラインロッジは居心地の良い暖か味があります。建物自身、内装、家具の一つ一つにいたるまで厳しい環境のこの山に寝泊りして、このティンバーラインロッジを完成させた男たちの「心意気」と「手」が感じられる建物です。

(ニューヨーク在住 しだ ひろこ)

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