いつまでも快適に、楽しく暮らすために ―― お掃除のプロ、綾部恵子さんのエッセー
効果的なお掃除には次の3つの原則があります。
1.建材の性質を知る 2.汚れの性質を知る 3.その上で最適な洗剤と道具を選択する というステップが必要です。
あたりまえのことのようですが案外なおざりにされているのが、建材の性質を知るという第1のステップ。この第一歩が間違っていると、効率よくお掃除できないどころか、家を傷めてしまうことにもなりかねません。我が家の建材が何であるのか、どういう性質をもっているのか、手入れ法、してはいけないことなど、入居時の仕様書などでもう一度確認してみてください。日本の住宅はここ数十年で大きく変わりました。建材も構造も様変わりしているのに、掃除のノウハウだけが旧態依然のままということが少なくありません。
たくさんの種類の洗剤が店頭に並んでいますが、私たちが使用している洗剤は界面活性剤を主剤として、これを補助する助剤と添加剤を加えたものです。界面活性剤は汚れと水の界面に作用して、汚れを建材から引き離して除去します。助剤はこの働きを加速させます。そして洗剤に特別の目的『汚れ落とし』を持たせるものとして、酸・溶剤・研磨剤などが添加されています。
洗剤の液性は中性・アルカリ性・酸性に大別され、中性洗剤はひどい汚れには洗浄力がやや弱いが、材質を痛めたり手荒れの心配は少なく、アルカリ性洗剤は手垢、泥、キッチンの油脂やスモックやタバコなどのタール質の汚れ落としに強く、酸性洗剤は便器の尿石、鉄さび、石鹸かす、水垢などに有効に働きます。
洗剤は汚れと建材に応じて洗浄力の緩やかなものから徐々に強いものを使用するのが基本です。初めから強力な洗剤を使い続けたり、間違った使い方をすると建材や人体にダメージを与えることがあります。最近、重曹や酢の力が見直されブームになっていますが、加熱気味のやみくもなナチュラル志向には危惧もあります。重曹のアルカリや酢の酸性を嫌う設備機器や建材もあるので洗い流しをきちんとするなどの注意が必要です。
毎日のお掃除は洗剤なしで水やお湯でタオルやスポンジを使って拭き取るだけで十分です。頑固な汚れをつくらないことが大切で、少しの洗剤で大きな効果を上げることが上手なお掃除です。言い換えれば頑固な汚れのほとんどは毎日少しずつたまっていったものだからです。
洗剤のラベルに表示されている液性や成分、注意事項を確認して上手に活用しましょう。
綾部恵子