名古屋で輸入住宅を施工し始めてはや15年くらい経ったでしょうか。今はもう殆どの輸入住宅ビルダーは、北米から自社で資材を直接輸入するなどということはなくなってきてしまいましたが、未だに面倒な手間・暇を掛けて輸入し続けている私は、頑固ものなのかも知れません。
そんな私が、今までの経験や輸入資材のノウハウを少しこちらで紹介していきたいと思います。
まず手始めに、「ドライウォール」についてお話ししましょう。
それは、欧米では主流のインテリア、塗装による塗り壁のことです。日本では、有害化学物質を多く発散させるビニールクロスを貼るのが一般的ですが、私たちはカナダの体に安全な水性塗料 パラペイントを使ってカラフルな壁に仕上げます。塗装ですから、どんな色遣いでも思いのままですし、汚れてももう一度上から塗ってしまえば、以前の美しいインテリアを取り戻すことが簡単に出来るのです。
そう、映画に出てくるインテリアは、全てドライウォールで仕上げられています。かっこいいですよね。クロスのように特別な施工技術が必要ないので、自分たちでリフォームすることが出来るのも魅力です。また、クロスのように剥がす必要がなく、塗り直せば塗り直す程、塗装の厚みが増して塗膜が強くなります。
下地は、通常石膏ボードですが、ボードとボードとのジョイント部分は天然石膏の輸入パテ(Compound)と紙のテープを使います。また、一般に広く日本で使われているベベルエッジと呼ばれるボードは使いません。ベベルエッジとは、ボードの角を少し面取りしているボードのことを言いますが、これでは石膏パテや紙のテープを入れることが出来ず、クラックを防止する対策が十分果たせないのです。そこで使われるのが、欧米と同じテーパーエッジの石膏ボード。ボードの端がえぐれたように凹んでいるので、パテとテープを使ったジョイント処理が可能なように考えられているのです。
石膏ボードは欧米で考えられた製品ですから、本来日本に導入された時は、テーパーボードであったはずなのですが、施工を簡略化して手間やコストを優先した結果、欧米とは全くかけ離れた不十分な材料や施工方法が一般化してしまいました。
石膏パテにしてもしかりです。輸入パテのいいところは乾いても柔軟性があるというところです。日本のものは、速乾性があるので、乾くとプラスチックのように固くなってしまいます。逆に言えば、少し家が動けばジョイントがビシッと割れてきてしまうのです。「柔よく剛を制す」は柔道の精神のひとつですが、まさにドライウォールでも柔軟なものの方が、固いものよりも強いのです。また、速乾性のある材料は、VOC(揮発性有機化合物の総称)を多く含んでいるので有害でもあります。これも家の完成度よりも施工性を優先した結果、日本で考えられたものだと言えますね。
だから、私たちはわざわざ北米からこうした安全な石膏パテも輸入します。漆喰壁のように「コテ仕上げ」の表情を付ける場合やオレンジの皮のような細かいブツブツを吹き付ける場合(オレンジピール・テクスチャ)などにも使える多用途の石膏パテ(All Purpose Compound)です。
ドライウォールのデザインを決めるのは、パラペイントのような仕上げ塗料ですが、見えないその下地にこそこだわるべきだと思います。輸入住宅を建ててみたいとお考えの皆さんは、どうぞ本物を目指して下さい。日本でも本場の施工をして頂けるドライウォーラーも増えてきています。家の価値を高めて長く愛していけるようにするには、本物へのこだわりは非常に大切なのです。勿論、こうした輸入資材が欲しいという方がいらしたら、お分けもしますよ。