先回のコラムでは、レンガ積み外壁の必要性や性能、円高によるメリットなどをお話ししたのですが、今回はレンガを積んだ外壁の美しさはどこからくるのかを、実際の施工という面から解説していきたいと思います。
皆さんもお分かりだと思いますが、家というものは1軒1軒大きさや形、ドアや窓の位置など様々です。外壁にレンガを積むからといって、それに合わせて建物の幅や高さ、形を設計するなどということは、通常ではあり得ないことです。
つまり、家の骨格が先に出来上がっていて、レンガ外壁の施工はそこからスタートします。レンガを積む職人が、積み始める際に構造体を考慮しながら、どのように積むときれいに積めるのかを計算しなければならないのです。さて、そんなことが実際に出来るものなのでしょうか。1階の窓と2階の窓とが、上下同じ位置にあって同じ大きさで、尚且つレンガの幅や高さでの割り付けがピッタリに設計された家なんて現実には存在しません。
そこで、レンガ職人は特殊なメジャー(巻尺)を使います。それは、レンガのモルタル目地の高さや幅を微妙に変化させた場合、レンガの高さや幅がどのくらいに達するかを正確に目で計測できるという優れものです。ですから、彼らは、それを使って予め標準的な目地幅を決定しておいて、必要に応じて目では分からない程度で微妙に目地を調整しながら積んでいきます。
こうすることで、通常ならその位置にはレンガが到達しないような計算でも、何故かそこに丁度レンガがきているなんてことが可能となるのです。これは、一種神業に近いと言っても過言ではありません。勿論、他の部分を優先しなければならないという箇所も出てきますから、その時は大きくて硬いレンガをダイヤモンドカッターで割って調整することもあります。また、彼らは、専用ハンマーを使って手できれいに割るなどという技術もあるので、仕事のスピードと美しさを両立させているのです。
レンガ積みの外壁が美しいかどうかを見たければ、窓や開口部まわりの上下左右にあるレンガの施工を確認すれば一目瞭然。これは、レンガ積みだけに限ったことではありません。スライスブリックと呼ばれるレンガタイル張りの施工も同じです。
最後に、レンガ積みの外壁の最大の見どころをお教えしましょう。それは、アーチワークです。半円形に開口を作ったり、ハーフラウンドの窓の上にレンガを積んだりする場合は、その上に積まれるレンガの重みをレンガ自体で支えなければなりません。普通の窓であれば、分厚いまっすぐな鉄板を入れればその上にレンガを積めますが、アーチ状のところにはそんな鉄板は入りません。ですから、長崎のメガネ橋のようにアーチ状にレンガを積んでレンガ同士がお互い支え合うという施工が必要です。この美しさは、他では絶対味わえないですね。
そうそう、レンガ積みの美しさについて、もう一つ。それは、レンガの水平・垂直ライン。これがきれいに出ていると、まるで一枚の平らな外壁パネルのように見えますよ。
レンガ積み外壁について、更に詳しく知りたい場合は、私の下記ブログをご覧下さい。
ブログ「ホームメイドの資材紹介 / レンガ積み(Brick)」: