本物の輸入住宅を目指して Vol.5 −デザインを追究しないのは、日本だけ−

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日本でも戦前までは50年以上の寿命を持った建物が多く存在しました。また、街並みも日本家屋ならではの統一感があって、美しいものでした。この時代、住宅は、貸家が一般的であって持ち家は相当裕福な家庭でしか実現しませんでした。


焼け野原から出発した戦後は、高度経済成長という名目の下、多くの家庭で持ち家を夢見るようになりました。それは、政府の所得倍増計画の思惑とも一致して爆発的に拡大することとなったのですが、材木や建材の不足、施工者の技術継承に時間が掛かるといった問題を乗り越えなければなりませんでした。


そこに登場したのが、大手住宅メーカーが工場で製造するプレハブ住宅でした。粗末な資材を使っていても、それらを組み合わせるだけで短期間に誰でも造れる家であれば、一般大衆の多大な欲求に応えることが可能だったのです。ただ、そこには既に日本の伝統的な家の技術やデザインは、存在しませんでした。また、それは、欧米の建物にみられるデザインとも全く違っていたのです。そこにあったのは、雨風をしのげるというだけのただの箱でした。そういう状況の中で日本人の最大の失敗は、そういう住宅文化がアメリカナイズされた新しい価値だと勘違いしたことだったのです。


伝統や文化の後ろ盾のない建物が、てんでバラバラの形やデザインで街を埋め尽くしたのです。それは、私が住む名古屋だけでなく、日本全国で起こったのです。想像してみて下さい。あなたの部屋の床が畳で、そこにキャラクターの付いた学習机が置いてあり、窓には花柄のカーテン、ベッドはシンプルモダンだとしたら、そんな場所は、洗練とは程遠いところとなるはずです。そういうことが全国の街並みでも起こったら、美しい日本になるはずがありません。


今の住宅は、一昔前と比べてデザインもよくなっているからそんなことはなくなってきていると考える人もいるでしょう。でも、現在でも基本的に同じことが起こっているのです。それは、どんなに個々のものがデザインを考えて造られても、そのデザインに統一感がなければ、ゴチャゴチャしたおもちゃ箱のような状態になってしまうのです。


このような状況の中、これからの日本では街並みの美しさはもう取り戻せないのでしょうか。それには、相当の時間が必要かも知れません。一度失ってしまったものは大きいのです。ただ、戦後の日本では、アメリカ文化が大きく影響していることは確かです。であれば、欧米の伝統的なデザインを殆どの人は自然と受け入れることが出来るはずです。また、こうしたデザインには、時間が経過しても古さを感じさせない魅力が存在するのです。


幸か不幸か、今の日本の住宅は、30年もしないうちに建て替えられてしまいます。つまり、30年もすれば、街並みは一変し全く新しい街並みに生まれ変わることが可能なのです。その際、日本の伝統に根ざしたデザインを現代に蘇らせることも出来るかも知れませんが、今の生活スタイルにマッチさせるにはデフォルメすることが求められると思います。個々に違った形でデフォルメすると、また統一感のないものになる恐れが生じます。


であれば、いっそのこと、今の生活スタイルにも合致した欧米のデザインで街並みを構成しては、如何でしょうか。勿論、日本のよさである畳敷きの和室などは、その中にも十分に取り入れていくことは可能だと思います。


シンプルモダンのように時代と共に古くなる流行りのデザインではなく、欧米の伝統的なデザインを採用した輸入住宅こそが、街という資産の価値を高めていってくれるのではないでしょうか。そうすれば、美しい古い家が高値で売買され、日本でも住宅の資産価値が見直されるはずです。当然、価値を高める為のリフォームが頻繁に行われることにもなりますので、住宅建築という産業自体がこの不況から脱却出来るチャンスとなるはずです。


住宅産業を活性化し、世界に対して日本の価値や豊かさをアピールするには、輸入住宅のような美しいデザインで都市を彩ることが求められている。そういう時代なのではないでしょうか。

 

 

建築コンサルタント 村瀬雄三
有限会社 ホームメイド 代表取締役

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