本物の輸入住宅を目指して Vol.8 − 輸入住宅のメンテナンス −

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右側のガラスに細かなレースのカーテンが掛かっているようにも見えるアメリカ HURD社製のスライディング・パティオドア(掃き出しサッシ)。でも、左隣のガラスには、カーテンのようなものも何も映り込んでいませんよね。実は、右側のガラスは、細かいクラックがガラス全体にビッシリ入っている為に、レースが掛かったように見えているのです。

 

自動車のガラスと同様に、ガラスが割れても鋭利な形状にならず、細かな粒状となって砕けてしまうのが強化ガラスの特徴なのです。

 

通常、輸入サッシのパティオドアには、強化ガラスが二重に入っています。それは、誤って人間がガラスにぶつかっても割れないようにするという安全目的と、こうして何らかの原因でガラスの1枚目が破損しても、残ったもう1枚の強化ガラスが防犯・防水の役割を担ってくれるように考えられている為です。

 

一般的に強化ガラスは、先端の丸いバット(鈍器)のようなものでは簡単に割れません。だから、人間がガラスに突っ込むような状況になっても人間の方が打撲するだけで、ガラスの破損による大きな事故にはつながらないのです。アメリカは訴訟の国ですから、そうした安全への配慮が責任問題になるんですね。

 

勿論、ペアガラスにすることによる高い断熱効果が期待されていますが、更にこちらの窓にはLow-E(Low-Emission)という熱線反射フィルムと断熱効果をアップさせるアルゴンガスがガラス間に組み込まれています。

 

こうした機能は、現在私たちが北米から輸入するサッシには、ほぼ標準的に付加されています。それによって、今回のトラブルではガラスが飛散することなく、フィルムに付着した状態を保っているようです。

 

よくご覧頂くと、写真の左端には後付けされた国産の雨戸も見受けられますので、こういう状況ではガラスの交換自体に緊急性はありません。雨戸を閉めさえしておけば、取り敢えず防犯・防水の問題はクリアされますからね。あとは、見栄えや気持ち的な問題だけです。

 

そういう点で、本当に輸入サッシは素晴らしいと思います。

 

ただ、このお客様の家には、メンテナンスをしてくれるビルダーがいないという大きな問題がありました。新築施工をしたビルダーは、輸入住宅ブームの時に新しい事業として2x4の建築を手掛け始め、数件手掛けてからこの仕事から撤退してしまったらしいのです。それ以来、この設計・施工会社は何も対応してくれなくなり、まさに放置された状態でした。倒産するならまだしも、建築会社を未だにやっているのに建てた責任を果たそうとしないのは、あまりにも身勝手ですよね。

 

輸入住宅メーカーに限らず、こういうことが本当に多いというのが、日本の住宅産業なんです。つまり、お金になりそうなことにはすぐに飛びつくけど、面倒や手間が掛かることからは早々に逃げてしまうんですね。

 

ハード社の窓に限らず、アンダーセンやウェザーシールド、ウィルマーやインシュレート、マービンやローエンなどという輸入サッシは、輸入住宅ブームの際と比べて取扱いしている住宅メーカーが極端に少なくなっていますし、メンテナンスや補修にはそれなりの知識と経験が必要となります。

 

このお宅は、私共が手掛けたものではありませんが、輸入住宅の本当のよさを感じて欲しいという私共の思いは、変わりません。手間が掛かって、決して割に合うような仕事ではありませんが、こういうお客さんに対し、私たちが知らない顔をすることは絶対にありません。

 

それは、私たちの志に起因するものです。そういう気概が、ビルダーには求められているように思います。目には見えませんが、これがあるのとないのとでは建てたおうちの寿命が変わってくるはずです。

 

家を新築する仕事は誰しもやります。ただ、そこで皆さんが見極めなければいけないことは、将来のメンテナンス(維持管理)を一緒になってやってくれる企業かどうかです。ローコストを謳い文句にする住宅メーカーに、手間・暇掛かってお金にならないメンテナンスを期待するのは、酷かも知れません。

 

価格を重視する家づくりから、心意気や経営理念、知識や経験、センスを重視することに優先順位を変えていくと、皆さんの見えるものも違ってくるはずです。

 

 

建築コンサルタント 村瀬雄三
有限会社 ホームメイド 代表取締役

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