2x4netは2x4で家を建てたい人のためのサイトです。2x4工法が得意な全国の工務店・ハウスメーカー・設計事務所の情報を検索できます。
日本では、安価なグラスウールやロックウールが断熱材の主流です。グラスウールは、ガラスを細い繊維状にして綿のようにしたものであり、ロックウールは鉱物を同様にして固めたものですね。何れも無機物質ですから素材そのものに断熱性がある訳ではなく、繊維によって緩やかに覆われた空気がその中で滞留することによって、繊維の周辺の空気と一定の区分がなされることから、周辺で温度変化があってもその熱を伝達しにくくなるということで断熱性を発揮するんですね。
また、発泡スチロールのように素材の中に空気を内包しているウレタンフォーム(水泳のビート板のような素材)なども、外断熱や中断熱材(構造体よりも内側に施工する訳ではないので、内断熱ではありません)として使われますね。こちらも素材自体は樹脂で、内包した空気が断熱性を発揮しています。ですから、吸水性や吸湿性はありません。
一般的に日本よりも寒いと考えられているカナダでも、グラスウールは家の断熱材としてよく施工されます。やはり、安価で施工性が比較的よいということが大きいと思います。また、ウレタンフォームは、床下の断熱材や外壁材の下地として使われます。
ただ、こうした素材は水分や湿気を好みません。綿状のものは、水が入り込むとたちまち断熱性が落ちてしまいますし、板状になったものは、構造用合板等と接しているところに水分が入り込むとなかなか抜けず、カビや結露の原因にもなってしまいます。
ですから、グラスウールを壁の中に入れる場合は、室内や屋外の湿気が壁の中に侵入しないようにしなければなりません。そこで、室内側ではベーパーバリアと呼ばれる薄いビニールシートを入れて壁の中を隔離し、その後石膏ボードを張るのです。また、外壁には防水紙と呼ばれるシートを張って、同様に壁への水の浸入を防ぐのです。また、グラスウール自体もビニールの袋の中に入れてあって、それを破って施工しない限り、湿気の心配はありません。(実際は、柱の間隔が全て同じでなかったりして、断熱材を細く切って入れることがあります。袋を切ったところはテープ等で塞がなければいけませんが、それを怠っている現場は断熱性能が劣化します。
木造は比較的湿気に対して柔軟に対応しますが、軽量鉄骨といった構造では湿気はまさに大敵と言えるでしょう。でも、全てを完全に密閉出来るでしょうか。また、新築時はまだしも、何十年も経って建物が動いたり、伸縮したり、地震で壁や天井にヒビが入ったりすることはよくあることです。そんな時、壁の中はどうなるんでしょうか。
賢明な読者の皆さんならお分かりかと思いますが、壁の中に水分や湿気が入り込むということを予め想定した材料で施工をする必要があるのは明白です。原発事故のような想定外などという大げさなことでなく、十分想定の範囲内であるはずですから。
ですから、私はセルロースや羊毛のような有機物質で出来た生きた断熱材を使うことを推奨します。セルロースは、小学校の理科でも習いますが、木などの植物の細胞を構成する物質です。紙は、それを粉砕して固めたものですね。2x4 のような木造構造とセルロースの断熱材は、元が一緒ですから相性は抜群です。羊毛は、言わずと知れた天然ウールです
どちらも単価的には高価な素材ですが、空気を繊維の中に閉じこめて断熱性を発揮するだけでなく、吸放湿作用を特徴とします。それは、梅雨時は余分な室内の湿気を吸ってくれ、冬場は乾いた室内に適度な湿気を放出することを意味するんですね。
その為、壁の中を窒息状態にするベーパーバリアを施工する必要はありません。人間もそうですが、皮膚に直接ビニールを張られると汗ばんで気持ちが悪いですよね。室内をベーパーバリアやビニールクロスで覆うということは、同じことだと私は思います。こうした室内環境を改善する為に24時間換気をする訳ですが、機械に頼った不自然な状況はやはりおかしいと感じています。
セルロースの断熱材は、紙を細かく粉砕したリサイクル可能な素材です。それを壁の中に吹き込んで隙間なく充填させます。そうすることで高い断熱性を発揮すると同時に、空気の緩やかな流通のある中気密が出来るという訳です。当然、ビニールクロスもダメですから、室内はドライウォールのような塗り壁がベストです。最も手間やコストが掛かる仕事ですが、これ以上の機能や性能は、他の素材では実現出来ない気がします。また、羊毛も素晴らしい素材ですが、入れ方によって厚みや密度にバラツキが生じる可能性がありますので、注意が必要です。
さて皆さん、環境、生活、性能、長寿命、解体後のリユース・リサイクル、どれも実現出来る素材は、何だと思われますか。家は、断熱材だけで出来ている訳ではありません。全ての素材や施工が、自然の理に適ってこそ、素晴らしい家づくりが可能となります。
建築コンサルタント 村瀬雄三有限会社 ホームメイド 代表取締役