2x4netは2x4で家を建てたい人のためのサイトです。2x4工法が得意な全国の工務店・ハウスメーカー・設計事務所の情報を検索できます。
最近、大工さんから「建方仕事では、食えなくなってきた」という話を聞いた。建方工事とは、建物の構造(骨組み)を造る基本的な工事のことである。大きな柱や壁、梁を組み付ける為に、何人もの大工さんたちが1週間〜4週間現場で作業することとなる。
1〜4週間と期間に幅があるのは、事前に工場で壁などを造ってくる場合と、全てを現場で造る場合とで準備に差がある為である。長い期間に亘って構造を雨ざらしにしたくないという配慮から、最近は工場である程度造ってくるというやり方(パネルフレーミング)が主流ではあるが、現場が狭く大型のクレーンやトラックが入れない時は、時間は掛かるが現場で一から大工さんが造っていくこととなる(現場フレーミング)。
住宅メーカーから下請の大工さんに提示される金額が、このご時勢で下がってきた。その為、応援で現場に入ってくれる大工さんたちに支払う工賃に圧迫されて、段取りをしたメインの大工さんの手取りが少なくなっているというのだ。
その大工さんは、多分まだ恵まれた方だと思うが、建売のようなローコスト住宅の工務店の仕事を受ける大工さんは更に厳しい。下手をすると、サラリーマンの給料と変わらないくらいだという。今、大工さんの常用手間(日給)は、2万円くらい。25日働いて50万円。それを聞くと一般より多いように聞こえるが、社会保険料や交通費、道具代、車両代、体の消耗、ボーナスや有給休暇、福利厚生なしを考えるとどうだろう?
月に25日の労働っていうと週休2日がないくらいだし、当然お盆休みや年末年始、祝日や雨で作業が出来ない日を含んでいないことを考えると、月50万円を稼ぐのは結構大変なことだ。
勿論、一時的な常用仕事より一括して仕事を受ける請負の方が、自分の頑張り次第でもっと割がよくなるというのが普通だ。それは、早出や残業で通常より早く工事を終わらせれば、工事期間が短い分、日数当たりの代金が多くなるという理屈だが、今は請負代金自体がギリギリな為、早くやって稼ごうと思う大工さんの仕事は、自然と荒くなってしまう。
お客さんは、安く住宅が建てられて嬉しいはずだが、そこを施工する現場の人間にも生活がある。そこに無理が生じれば、自ずと家づくりにも無理が生じる。現場もビルダーも消費者もモラルがないのが、問題なのだ。
大工さんを含めて今の施工業者さんは、過大に利益を要求する人はいない。それを取りまとめている我々のようなビルダーも大儲けしようなんて考えている人は少ないはずだ。だが、誰もそう思っていないような感じさえある。
最近、シャープが大きな赤字を出したというニュースがあった。
過酷な価格競争は、会社の存続をも怪しくする。会社が存続出来なくなれば、アフターサービスやメンテナンスも受けられない。そして、そこの従業員や取引先の家族の生活も成り立たない。
こうした状況は、日本の社会をも疲弊させ、どこもかしこも値引き競争となる。これが、デフレの現実なのだ。結局、皆が損をする。それが、今の住宅業界でも起こっているということを忘れないで欲しい。切磋琢磨出来る競争は必要だが、それを超えた過度な競争は、産業や社会自体を潰す恐れがあるように思う。輸入住宅ブームが去って倒産した工務店で建てたお客。誰にも相談するところがないという彼らの悲劇は、計り知れない。
時には、予算が厳しいこともあるかも知れない。それでも、適度な報酬を頂いて、現場はいい仕事をさせて頂くという基本姿勢が大切だ。そして、お互いに感謝し合う。それが本来の家づくりの在り方ではないだろうか。今こそ、プラスの考えを皆が持つべき時である。
建築コンサルタント 村瀬雄三有限会社 ホームメイド 代表取締役