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輸入住宅ブームが去って、10年以上が経とうとしている。それでも欧米の暮らしに憧れる人にとっては、輸入住宅を建てることは夢であることは今も昔も変わらない。だからこそ、私たちのような輸入住宅ビルダーが、忙しく仕事をさせてもらえる訳である。
ただ、当時と今とでは状況が少し違ってきているのかも知れない。それは、10年以上経った輸入住宅がどうなるのかを、どこでも見ることが出来るようになったということだ。本格的な輸入住宅とデザインだけを真似て造った輸入住宅との差が生じている為、これから新築したいと考えている人は、それを目の当たりにすることとなる。
10年もすると、どんな住宅でもメンテナンスが必要となるが、ビルダーが倒産したり、輸入住宅の事業から撤退してしまったりした古い輸入住宅では、輸入資材の再調達がままならず、不釣合いな国産の部材に替えられていたり、メンテナンスされずに放りっぱなしになっていたりする。そうした家は、せっかくの価値あるデザインが壊れてしまう。
こうした家は、結局、国産住宅同様30年後には建て替えの憂き目に遭うだろうことは目に見えている。今、住み手や私たちのような施工業者に求められているのは、輸入住宅というブランドを如何に維持し、発展させていくかということに他ならない。皆が努力をすれば、欧米同様アンティークとしての建物の価値を社会も認めてくれるはずである。何れ来る中古住宅の不動産マーケットでも、輸入住宅はステータスを保つことが出来るはずだと私は考えている。
但し、それには条件がある。それは、50年後でも価値のある素材で造られていること。欧米同様の素晴らしいデザインが維持されていること。社会や生活環境の変化に対応して、リノベーション(日本では、リフォームと呼ぶ場合もある)と言われる模様替えや改築が適切に実施されていること。私は、この3点が大切だと考えている。
古いものをそのまま維持するということは、確かに素晴らしいことだが、生活スタイルは世代によって変化するものである。不易流行の言葉の通り、そのまま残しておくべきものと、新しく変えていくべきものがうまく融合してこそ、次の時代での価値が創造されるのではないだろうか。
だが、日本の住宅業界では、このリノベーションという新たなアートに取り組んだものは存在しない。30年で壊す文化があっても、100年住み続けることへの備えが全くないと言っても過言ではない。既存のデザインを継承しつつ、新たにモディファイするなどというセンスを持ち合わせたものがこの業界にいないというのも現実なのだ。
日本の設計士が、工学部出身で芸術学部出身でないというのも、ハードルを大きくする要因だと私は思う。今後、住宅建築を担っていく人材は、必ずや芸術に精通したものになっていくことは間違いない。そういうビルダーと出会い、長く家を維持管理していくことが、美しい日本を造り出す原動力になっていくはずである。
どうか皆さんもそう心に留めて、ご自身のおうちと向き合って欲しい。長く存続するであろう高い理念を持ったビルダーとの出会いが、大切なのだということを。
建築コンサルタント 村瀬雄三有限会社 ホームメイド 代表取締役