本物の輸入住宅を目指して Vol.22 ‐ 何故、戦後の有名建築は残らないのか?−

para_20121016.jpg先日、日経の建築関連サイトで、近代建築がスクラップになっていくことを嘆く記事を読んだ。2012年10月に復原オープンしたJR東京駅丸の内駅舎のように、戦前に建築された建物の多くは、重要文化財として保存を願う人たちが非常に多いのだが、戦後の建物は名残り惜しい感はあるが、いつの間にか取り壊されてしまうのだ。

 

バブル期に多くのカップルがクリスマスの予約に殺到したあの「赤坂プリンスホテル」や、2012年9月末を以て閉館し解体される予定の名古屋のシンボル「大名古屋ビルヂング」なども、耐用年数が来る前に壊される運命となった有名建築家の建物だ。

 

使い勝手が悪いだの、補修に費用が掛かるだの、デザインが古くて収益性が下がっただの、マイナス面を挙げればいとまがない。だが、もう一度よ〜く考えてみて下さいよ。そんな問題は、戦前の古い建物の方が深刻じゃないですか?結局、残るかどうかは、人々の愛着や価値観によるのです。

 

戦後の近代建築は、直線で表現される合理性・機能性がテーマだったような気がする。まっすぐ垂直に立つビルの壁。無機質なガラスやコンクリートを多用したデザイン。強度と大きさを意識した鉄骨や鉄筋コンクリートの構造体。これらは、今の住宅トレンドであるシンプル・モダンにも通ずるものがある。

 

しかしながら、戦前の建築物には、人間の手で造り上げたという感覚が内外装のどこかしこに感じられる。西洋建築であれば、その起源はギリシャの円柱、エンタシス。日本の建築であれば、法隆寺や東大寺のエビのように湾曲した瓦屋根。歴史から来るデザインを連想させる何かが戦前の建築物には存在しているし、そういったものが見当たらなくても人間に美しさや安らぎを感じさせる1:1.6の黄金比で形作られていることが多いと言われる。伝統的なデザインというものには、人を落ち着かせたり馴染んだり出来る要素があるのだろう。

 

私は、戦後の建築デザインを否定している訳ではない。むしろそういう建物も残すべきだと思っている。それは、良くも悪くも戦後の日本の文化を表す象徴だと思うからだ。だが、人々がそうすることを希望しない限り、スクラップにされてしまうことは避けられない。平均寿命25年と言われる戦後の住宅、今の住宅もしかりである。

 

欧米のように100年以上の寿命がある建物を建てなければ、いいものを残すという豊かな文化は育たない。今が、その為のデザインや素材を考える時期なのではないだろうか。スマートハウスなどという機能のみを売りにしただけの住宅では、何ら日本の住宅の質を上げることは出来ない。家は、使い捨ての家電ではないのだ。100年近く愛され続けたJR東京駅丸の内駅舎のレンガ積みの姿は、それを物語っていると私は思う。

 

建築コンサルタント 村瀬雄三
有限会社 ホームメイド 代表取締役

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